「頭部に受けた外傷」で脳が損傷することを外傷性脳損傷といいます。
    その外傷性脳損傷の「20%に中等度以上の脳機能障害残る」ということなのです!
     
    しかも、その「脳機能障害」をおってしまうと普通に生活することさえも大変になってしまいます💦
     
    「外傷性脳損傷」となるのは、交通事故、転落、転倒と色々な原因がありますが、誰におこってもおかしくないものです。
     

    また、受傷される人が比較的活動的な若年の人が多いので、復職や復学といった「社会生活への復帰が問題になる」こと、「障害の回復がゆるやかで長期間にわたる」ことなどと問題となることも多いのです。
     
    今回は、その多くの問題をかかえるであろう頭部外傷(外傷性脳損傷)の後遺症とリハビリテーションについて紹介していきたいと思います。

    20%に中等度以上の障害残る⁉


     
    外傷となる原因は約50%が交通事故で最も多く、転落や転倒もあります。
     
    外傷性脳損傷患者のうち
    13%が死亡
    1%が植物状態
    20%に中等度から重度の脳機能障害が残るという結果となっています💦

     

    頭部外傷の障害の特徴


    外傷性脳損傷の障害の特徴

     
    ・脳卒中などの疾患にくらべて運動麻痺よりも高次脳機能障害が目立ちやすい
    ・「脳の広範な障害によるもの」のため、色々な障害が混在する
    ・受傷者が比較的活動的な若い人が多いので、
      「復職や復学といった社会生活への復帰が問題」
    になる
    障害の回復がゆるやかで長期間にわたる
    ことが挙げられます。

     
    運動障害としては、運動麻痺・嚥下障害・失調症・構音障害などがおこりやすい症状です。
     
    運動麻痺とは…脳の(運動中枢から筋線維までの)どこかに障害があって、自分の思ったように運動ができない状態です。
     
    嚥下障害とは…食べ物が飲み込みにくくなったりする「飲み込みの障害」です。
     
    構音障害…発音が正しく出来ない症状です。


     

    高次脳機能障害とは⁉


     
    会社や家庭でも気づかれないこともあり、社会的認知度が低いので「静かな障害」といわれることも…
     
    私たちの脳は、どんなにすごいコンピューターが束になってもかなわないくらいの複雑なすどい能力を持っています!
     
    コップをつかんだり、運動したりと色々な動作をするだけではなく、テレビを見て笑ったり、言葉を使って相手とコミュニケーションをしたり、昨日の出来事を覚えたりするような複雑なことまで脳が関係しているのです。
     
    このような多彩な脳の働きの中で、他の動物達とは違う「人間らしい脳の働き」を総称して「高次脳機能」と呼びます。
     

     
    なので、怪我や病気などで高次脳機能が傷害されてしまうと、ぱっと見た感じはふつうなのに、記憶力が落ちていたり、根気が続かなかったり、判断力が低下して、社会生活にうまく適応できなくなることになるのです💦
     
    障害の程度によっては本人ですら気づかないこともあり、周りから理解されにくい障害のひとつと言えるでしょう。

    頭部外傷の後遺症


     
    まれに、頭部外傷後にてんかんを起こす場合もあります。

    また後遺症は、損傷が「局所にとどまっているか」「広範囲にわたっているか」でちがってきます。
     

     
    「高次脳機能障害」になると、人格形成やコミュニケーション、記憶、注意力など、社会生活を送るために大切な脳の働きが悪くなってしまいます💦

     
    その結果、暴力を振るう、無気力になる、失語症になる、物の名前や操作手順、約束を覚えられない…
    などさまざまな症状がおこってしまうのです。

     

    また、局所の脳や頭蓋骨が大きく破壊された状態になったり、脳挫傷(のうざしょう)などでは、受傷した部位から後遺症の予測がある程度可能ですので、紹介していきますね!
     


     
    片側の前頭葉や側頭葉の前から数cmまでの範囲は、比較的後遺症をおこしにくい場所です。
     

     
    「前頭葉(ぜんとうよう)」のいちばん後ろには手足を動かす「運動中枢」があるので、損傷をうけた側と反対側の半身の麻痺(片麻痺)をおこします

     
    前頭葉の後ろには「頭頂葉(とうちょうよう)」があり、頭頂葉のいちばん前には手足の感覚(体知覚)の中枢があります。
     
     
    体知覚中枢(たいちかくちゅうすう)は運動中枢と接して存在するため、通常は運動麻痺感覚障害の両方があらわれてきます

     
    そのほか…
     
    「言語障害」は一般に左の脳の障害でおこりやすいとされています。
     
    ・「広範囲の損傷」や、「脳の深部の損傷」では意識障害が後遺症として残ります

     
    重症の場合は…
     
    開眼(眼を開けている状態)していても意思の疎通(そつう)ができず、運動や言語も損なわれて遷延性(せんえんせい) 意識障害(いわゆる「植物状態」で回復の見込みがない状態)になります。
     
    生命維持中枢(脳幹:のうかん)の機能は保たれているので、呼吸や心臓機能に障害はみられず、脳死とはまったく違う状態です。

     
     

    高次脳機能障害の症状

    覚醒度(かくせいど)低下

     
    覚醒度が低下していると睡眠時間が長くなったり、呼びかけや刺激に対する反応が悪くなるなど常にボーとしていることが多くなります


    このような状態で物事を行おうとすると普通よりも過度な労力を必要として、疲労の蓄積が起こりやすくなったりすることがあります。
     

     

    脱抑制(だつよくせい)症状


     

     
    ちょっとしたことでとても興奮しやすくなったり、周りの人に暴言を吐いたり、暴力を振るったりするといった症状がよくあります。

     
    また人によっては、ちょっとしたことで泣き続けたり、笑うのが止められなくなったりと、感情のムラが大きくなって、自分自身で抑えることのできない状態となります💦

    自発性の低下

     
    覚醒度の低下と似ていますが、これは起きて目はしっかり開いてはいるけれども自ら何かをしようとする意志が現れない症状です。
    他人からの指示等があってやっと動き出すが、放おっておくと何も出来ない、なにもやる気が起きないという状態です。

     
    これは周りの人が見ていると「なんでやらないんだ、なぜできないんだ」とまどろっこしいかと思います。
    ですが一つ大事な点として、本人は好きでぼーっとしているわけではないんです。
     
    脳のある部分が傷ついて、その部分が動かないため、このような状態になっているのです💦

     

    注意力の低下


     
    また、一度何かに注意を向けると別の刺激があってもその注意を移すことが難しくなったりします。
     
    さらに注意力が低下すると、よそから見ているとぼんやりしている、あきっぽい、人の話を聞かない、落ち着きが無いといったふうに見えることがあります。
     

    <注意力の低下への対処法>です!

     
    ひとつの作業をずっと長くやらせるのではなく、いろいろな作業を組み合わせて、興味を持たせ続ける工夫が有効です。
    そして、同時に複数の作業を与えるのではなく、静かな環境で一つ一つ確実に作業をこなせるようにしていきましょう!
    作業が達成したら、ほめてあげることが大切です。

    記憶障害

    記憶障害の主なものとして…

     
    何年も前のことは覚えているけれども、新しく巡り合ったものやその意味などを覚えることが困難となったり、目の前にある問題を処理する手続きがわからなかったりする記憶障害があります。

     
    具体的には、待ち合わせ時間を覚えていられなかったり、新しく会った人の顔を覚えられなかったりといったことがあります。
     
    <記憶障害への対処法>です!

    携帯電話のスケジュール表やカレンダー、アラーム機能などをうまく組み合わせて、重要な要件に気づきやすくしたり、思い出しやすくなるような工夫が必要です!
     
    また、メモをまめに取ることで記憶しやすくなるという効果もあります。
    忘れてしまったことを思い出す手がかりにもなるので、「メモをする」ことを日常習慣にするよう促しましょう。

    遂行(すいこう)機能障害


     
    人に指示してもらわないと何もできず、いきあたりばったりの行動をします。
     

    皆さん、意識はしていないでしょうが、日常生活の中で「遂行機能」を使った以下のような行動をしています。

    ①目標を設定する
     ↓
    ②計画をたてる
     ↓
    ③計画の実行する
     ↓
    ④判断・評価する

    遂行機能障害は「前頭葉」症状の一つで、このような一連の手順がうまくできなくなってしまいます。
     


     
    障害されると「見た目」には、以下のような症状として現れます。 

     
    ・計画性が無い。
    ・段取り、要領が悪い。
    ・柔軟性が無く、融通が利かない。
    ・判断や決断ができないため、開始することができない。

     
    <遂行機能障害への対処法>です!

     
    毎日の行動をパターン化して、単純な作業から練習させるようにし、徐々に行動内容を高度にしていきます。
    日常生活や仕事内容の段取りをマニュアル化しましょう。
    そして、手順を確認させながら繰り返し練習することにより遂行機能は上達してきます。

    病識の欠如


     

     
    自身が障害をもっているということに気づかないで、時にはそれを否定しようとするため、結果的には必要なリハビリテーションを続けることができなくなります。

     
    このような場合、無理に障害があることを納得させようとすると、かえって悪影響を与えることが多いです。
     

    これまで症状を見てきたなかでも、「脱抑制症状」や「遂行機能障害」は周囲の人から見ると特に目立って見えて、時に異常行動のように思えてしまいます。
    なので、本人だけでなく周囲の人たちの「正しい理解をもつ」ということが大切です。
     
    また、受傷による心理的な反応として落ち込み悲観などといった感情の変化が強く見られることがあります。
    これは病的なものではなく、誰におこってもおかしくない、ごく自然な心理的な変化だとおもいます。
     
    しかし…!

     
    この落ち込みが継続すると運動・高次脳機能のリハビリテーションに対して否定的に働いてしまいますので、注意が必要です💦

    リハビリテーション

    急性期

    頭部外傷の急性期では…

     
    生命の危機不安定な全身状態・意識状態などがみられて、肺の損傷や手足の骨折をともなっていることが多いので、集中治療室での全身管理や、二次的合併症の予防が大切となります

     
    急性期においての目標は、意識状態や全身状態の安定・改善です

     

    これが安定すれば「リハビリテーション」を開始します。

    この段階では昏睡や半昏睡状態であることが多いですがこの時期に感覚刺激を入れることが大事といわれています。
    意識状態が低下している状態での大事なこと

     
    ・感覚刺激の入力
    ・車椅子やベッド上での姿勢・肢位(ポジショニング)
    ・手の位置を固定する装具などを用いた良い体の位置の設定
    ・筋や関節のストレッチによる二次障害の予防

     
    この中でも、とくに「関節が硬くならないよう」に注意を払う必要がありますし、「長期間の寝たきりによる廃用症候群の予防」が大切となります。
     
    また、可能であれば急性期の時期でも「患者さんの障害状態」を正確に把握し、日常生活を安定しておくるためには何が問題かを検討することが大切です。

     
    頭部外傷では「運動麻痺」や「感覚障害」などのほかに注意力や記憶力といった見えざる障害”が隠れていることが多いと言われています。

     
    とくベッドの上で治療をうけているときには、目立たなくても実際に他人と会話をし、コミュニケーションをとるようになると目に付くようになるものもあるのです💦

    回復期

    回復期では…

    全身状態の安定とともにより「積極的に運動障害や高次機能障害に対して回復をうながしていくこと」が大事になります。
    これらのアプローチには 、つぎのようなものがあります。

     
    運動機能へのアプローチ
    日常生活動作へのアプローチ
    認知機能へのアプローチ
    行動異常へのアプローチがあります。

     

     
    これは考える過程(思考過程)での問題であり、「職業復帰や就学への障害」となることが多いので、克服できるようにアプローチしていくこと大切です。
     
    また、この状態では一度に処理できる情報量が低下し情報処理のための注意の集中が難しい状態となっています。
    なので、情報量を小さくし、自動的に情報処理が可能となるよう繰り返し練習することが大事です。

    行動異常を引き起こす原因としてつぎのようなものがありますので、「行動異常へのアプローチ」の参考にして下さい。

     
    ・疲労やストレスへの耐性の低さ
    ・感覚の過負荷
    ・環境コントロールの欠如
    ・洞察の欠如
    ・記憶の欠如など

      
     

     

    回復期においては認知機能障害がより重大な問題となってきます。
    このことは頭部外傷の一般的な予後(病気の見通し)として、
    「初期の昏睡」や「外傷性の健忘」が長いほど高次脳機能障害が大きく、その回復は意思疎通や運動能力の回復にくらべ悪いためです。
     
    また。頭部外傷は若い人に多いため、学業復帰や職業復帰など社会への再統合が大切です
     
    なので、認知障害や行動障害が大きな阻害因子となり、経過が長くなるため「退院後のリハビリテーション」が必要となることが多いのです。
     
    頭部外傷のリハビリテーションの大切なゴールの一つとして、その人の運動機能・高次脳機能を必要な環境へ適応させ、社会へ再参加させることが挙げられます。
     
    ゴール設定を左右するものとしては…

     
    ・高次脳機能障害の種類や程度
    ・運動障害や感覚障害の種類や程度
    ・合併症の種類や程度
    ・行動や情緒の異常などが上げられます。

    教育・職業へのアプローチ

    頭部外傷はその主な原因が「交通事故」なので、若い人に多く、復学や復職の問題が重要となります。
     

     
    また、地域社会で生活を送るのに必要な買い物などの「基本的な技能」を再獲得することも大事です。
     
    なので、金銭管理や買い物などの「基本的技能」から開始し、徐々に交通機関の利用など「社会への参加に必要な技能」の獲得を目指すことが大切となります。

    できることを生かす!


     
     高次脳機能障害の診断は、下記のようなことを検査、観察し総合的に判断します。

     
    ・コンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像法(MRI)などによる画像検査
    ・知能や記憶に関する検査
    ・患者の行動観察など

     

     
    損傷部分自体を治すことは出来ませんが、リハビリや薬物療法で脳の障害を最小限にし、損傷を受けていない領域が失われた機能を補うことで、機能を部分的に回復させることができる可能性はあります!

     


     

    回復の見通し


     
    最終的にどの程度まで回復するかは、脳損傷の程度、年齢、意識障害の長さ、記憶障害の重症度などによって変わってきます。
     
    頭部外傷の一般的予後では「移動や意思の疎通などの回復」にくらべ、「高次脳機能障害、行動異常などの回復」は悪く最後まで大きな問題となることが多いのです
     

     
    とくに初期の昏睡期間が長かったり、認知機能の障害が大きい場合には、後遺症の程度も大きくなる傾向があります。

     
    回復の期間においても受傷後6ヶ月以降は回復が少ないが1年までは神経学的回復が見られるなどの報告があります。
     
    また、社会性の回復に関しては10年以降も見られるといわれています。
     
    しかし、職場復帰できるまで回復する場合もありますが、残念ながら重い後遺症が残る場合もあります💦
     
    いずれにしても、長期的な見通しをつけることは簡単ではありませんので、専門医に相談することも大切です。

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