人生において、誰でも一度くらいは頭をぶつけたことがあると思います。
    頭をぶつけてできる怪我(頭の皮膚や頭蓋骨の損傷、脳の損傷)を、医学的には「頭部外傷」と呼びます。
     
    たとえば、交通事故、スポーツや、酔っぱらって転んだときなど。
    ちょっと頭をうったくらいでは、「まさか、そのくらいのことで大変な事になることなんてないだろう」と思って当然ですよね。

    でも「思いがけない力」で頭をぶつけた場合、生命の危険にさらされることもまれではないのです💦

     

     
    脳は、かたく分厚い頭蓋骨によって外傷からまもられています。
    また、脳脊髄液をふくむ組織の層(髄膜)に覆われていて、これがクッションの役目をしてくれています。


     

     
    脳への影響がない頭部外傷 ⇒ 軽症
    頭部外傷によっての脳の損傷(外傷性脳損傷TBI)⇒ 重症


    日本人の頭部外傷数は年間およそ28万人と推定されています。
    死亡原因の統計では、”不慮の事故による死亡”は第6位、死亡総数の3.3%を占めます。
    そして、不慮の事故のなかでも「交通事故死」が非常に重要となっているのです💦
     
    交通事故死のなかで、頭部外傷の死亡率はおよそ5%です。
    逆に頭部外傷死の原因の60%は交通事故によります

    頭部外傷を受けた人の1/4に後遺症が起こるといわれています💦

     
    その他の原因として高齢化にともなう、高齢者の転落、転倒、幼児虐待などが挙げられます。
    ここでは、頭をぶつけた時に頭の中でどんな大変なことが起きているのか、または、注意しなければならないポイントなどをを分かりやすく解説していきます。

    損傷の分類


                                                             
      
    まずは、頭皮から下には何があるか、その部分での損傷とはどのようなものなのかを説明しますね。

     
    ①頭の一番外側(頭皮)

    ②帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)

    ③腱膜下組織(けんまくかそしき)

    ④骨膜・骨

    ⑤硬 膜(こうまく)

    ⑥くも膜

    ⑦軟 膜(なんまく)

    ⑧脳
     

    軟部(なんぶ)組織損傷

    ①~③に打撲などで損傷をおったものを軟部(なんぶ)組織損傷といいます。
    軟部組織で血腫が形成されると、いわゆる ”たんこぶ”となります。
    これは、自然に血液が吸収されるため基本的に治療は必要ありません。
    でも、血腫が巨大な場合には治療が必要となってきますので注意が必要ですね。
     

    新生児の帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)下血腫

    また、分娩時におこる新生児の帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)下血腫では、大量出血から死にいたる恐れがあるので、輸血が必要となってきます。

    頭がい骨骨折と脳損傷

    ④に損傷をおったものが頭がい骨骨折です。
    ⑤~⑧に損傷をおったものが脳損傷

    頭部外傷は一次性損傷と二次性損傷の2種類にわけられます。

    一次性損傷


     
    種類としては、次のようなものがあります。

     
    ・軟部組織損傷
    ・頭がい骨骨折
    ・脳損傷(頭がい内血腫や脳挫傷など)

    二次性損傷


     
    種類としては、次のようなものがあります。

     
    ・頭がい内圧亢進
    ・脳ヘルニアなど

     
     
    また、外傷によって傷ができたときに、傷がふかく脳と外界が交通しているかによっても開放性と閉鎖性にわけられます。
     
    ・開放性→強い衝撃によって骨折し、皮膚や筋肉、血管などにまで損傷を与えて、外部に飛び出しているもので骨折部と外界が直接交通してしまっているものです
     
    ・閉鎖性→脳が外界と交通していないものです。
     
     
    「開放性頭部外傷」では頭がい内感染のリスクが高くなるので、髄膜炎(ずいまくえん)脳炎などになることがあるので、早急な外科的治療が必要となります💦

    部位による外傷の違い

     まず一番表面にある、皮膚の外傷からみていきましょう。

    皮膚の外傷

     
    打撲した部位の「皮膚の中」に出血するもので、普通は自然に治ります。
     
    たんこぶの中には柔らかくぶよぶよしたものもあります。
    一方皮膚が深く裂けているものを頭部裂創(れっそう)又は、切創(せっそう)といい縫合する必要があります。
     

     
    頭の皮膚は血流が良いことと、突っ張っている特性から出血しやすいのです
    出血量が多く、止まり難い場合には病院を受診してくださいね。

    頭蓋骨の外傷

    ひび割れ線が入る程度の骨折(線状骨折:せんじょうこっせつ)から、複雑に頭蓋骨が割れて、さらには頭の内側にめり込んでしまうような骨折(陥没骨折:かんぼつこっせつ)もあります。
     
    骨折してしまった場合、それだけ強い力が頭に加わった証拠になりますよね。
    なので、ほとんどの場合入院治療が勧められます。
     

     
    複雑な骨折、陥没骨折は手術が必要になる場合があります。

    骨折部からの出血が多い場合、脳や脳脊髄液と呼ばれる”水”が出てくる場合には緊急手術となります。

    脳の外傷

    本当に怖いのはその膜の下に存在する脳に影響が及ぶような外傷です。
    これを「頭蓋内損傷」といいます。
     
    とくに、交通事故や高い所からの転落事故などで、頭部に大きな力が加わる場合には、重症頭蓋内損傷となることが多くなってきます。
     

    このような場合を「高エネルギー外傷」といいます!

    「高エネルギー外傷」は、頭以外の外傷(胸、おなか、手足など)をともなうことも多いので、一見元気そうに見えたとしても注意が必要です💦

    脳の出血部位による病名の違い

    また、脳のどの部分に血が出たかによって、下記のように病名は変わってきます。

     
    急性硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ):脳と硬膜の間に出血したもの
    急性硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ):頭蓋骨と硬膜の間に出血したもの
    脳挫傷(のうざしょう):脳細胞が直接ケガをしたもの
    くも膜下出血:くも膜と軟膜の間に出血したもの

     

    頭部外傷による死亡の原因


     
    一次的な死亡原因としては、頭がい内出血によるものがもっとも多く(50%)、その次に、脳幹部損傷開放性頭部外傷による出血性ショックが多いといわれています。

    頭がい内出血


     
    頭がい内出血では、血腫などによって脳が圧迫をうけます

    脳の循環不全がおこり、腫脹(炎症などが原因で腫れあがること)して、さらに周辺を圧迫します。

    低酸素脳症(脳に酸素がいきずらくなります)となります。

    脳浮腫(脳にむくみがおこります)がおこります。

    頭がい内圧亢進(頭痛、悪心、嘔吐などの症状がでてきます)

    脳ヘルニア(脳が正常な位置から押し出された状態で、さまざまな神経症状)がおこります。

    脳幹部圧迫

    死亡

    開放性頭部外傷

    出血性ショックによるものが多く死亡にいたります。
    その他にも、感染症中枢性嘔吐による吐物の誤嚥(ごえん)でおこる窒息なども死の原因となります。
    誤嚥(ごえん)とは…
    本来は食道を通って胃の中に入らなければならないものが、 誤って気管内に入ることです。

    症 状

    軽症の頭部外傷

    頭にこぶができることがあります。
    「皮膚の外傷」で説明したように、頭皮の表面に近い場所には多くの血管があるため、頭皮が切れると大量に出血します。
    そのため、頭皮の外傷は実際以上に重症にみえます。
     
    【症 状】

     
    頭痛目が回る感じふらつきなどの症状もよくみられ、人によっては吐き気がおこることもあります。
    小児では嘔吐が多くみられます。

     

     
    脳しんとうは精神機能が一時的に変化することをいい、脳の構造に損傷はみられません
    多くは、少しの間(通常は2~3分間以下)意識を失いますが、場合によっては錯乱が起きたり、外傷を負った前後の出来事を一時的に思い出せなくなったりする(健忘症)こともあります。


    脳しんとうが起きた後しばらくの間は、頭痛やめまい、疲労、記憶力の低下、集中力の低下、睡眠障害、思考障害、イライラ、うつ状態、不安がおこることもあります。

    こうした症状を脳しんとう後症候群といいます!

    重症の頭部外傷

    重症の頭部外傷では、意識を失ったり、脳機能障害の症状が現れたりすることがあります
    重症の頭部外傷の治療では、脳に十分な酸素を供給することや、脳圧を正常に保つことが目標になります。

    重症の頭部外傷では、病態の変化がコロコロとかわるため、原則入院として、ICUで継続的な観察が必要となります。
    症状としては、 軽度の頭部外傷と同じような症状が起こることがあります。
    そのなかで、頭痛などの一部の症状は重くなることもあります。
     
    最初に一時的な意識消失がみらることが多く、この症状は頭部に衝撃を受けた瞬間におこります。
     
    持続期間は人によって違い、数秒後に意識がもどることもあれば、数時間から数日間にわたって目をさまさないこともあります。
     
    意識が戻ってからの症状として

     
    多くは眠気や錯乱落ちつきのなさ興奮がみられ、
    嘔吐やけいれん発作あるいは両方がおこったり、平衡感覚や協調運動が損なわれたりすることもあります。

     
    脳のどの部分が損傷したかによって、思考能力、感情の調節、運動、感覚、言語、視力、聴力、記憶などに障害が現れ、この障害は一生残ることもあります
     

     
    脳が損傷すると、出血腫れがおこります。
    出血や腫れによって脳が大きくなっても頭蓋骨は広がらないため、脳にかかる圧力が徐々に高くなります
    圧力が高まるにつれて、患者の症状が悪化し、新しい症状がでてきます。
    症状の変化を紹介していきます。

    【頭蓋骨内の圧力が高まったときの初期症状】

    頭痛の悪化や思考障害、意識レベルの低下、嘔吐などです。

    刺激に対する反応が失われ、瞳孔が開きます。

    外傷から1~2日以内、圧力上昇により脳が下方に押し下げられ、脳の仕切りにある開口部から脳組織が異常に突出する「脳ヘルニア」が起こります

    心拍や呼吸などの生命維持機能をコントロールしている脳幹(脳の下部)が過剰に圧迫されます。

    昏睡状態

    死亡

    頭蓋内損傷に共通する症状

    脳のどこが損傷されるかによって症状は変わります。

    一般的な症状を紹介します。
     

    頭痛嘔吐
    運動麻痺(特に半身運動麻痺。真っ直ぐ歩けない、立てない、顔が曲がる)、
    感覚障害(特に半身のしびれ。びりびりする、触っても感覚が弱い)、
    言語障害(言葉が話せない、呂律が回らない、理解できない、会話が成り立たない)などに始まり、
    進行すると、
    意識障害(反応が鈍い、目を覚まさない)、けいれん発作などがあらわれてきます。
    そして、放置しておけば最終的には死に至ります。

    重症の頭部外傷の見分けかた


     
    深刻な外傷は「特定の症状」によって見分けられます。
    そして、これらの症状は脳機能の悪化をしめすものです。

     
    • 嘔吐、顔面蒼白、イライラ、眠気が6時間以上続いている
    • 意識を失った
    • 体の一部が動かない、または感覚がない
    • 人の顔を見分けられず、周囲の状況が理解できない
    • バランスを維持できない
    • ろれつが回らない、眼のかすみ、視野の欠損など
    • 鼻や耳から透明な液(脳脊髄液)が漏れ出る
    • ひどい頭痛がある

    頭部外傷で注意するところ!

    頭蓋(ずがい)骨のなかには脳が入っており、大脳、小脳、脳幹に分かれています。
    脳幹には呼吸器、心臓など生命維持に必須な中枢があります!

     
    この「脳幹」という中枢に重大な損傷が起これば「即死」となり、医療の対象とはなりません。
     
    直接、脳幹に損傷がなくてもかたい頭蓋骨で密閉された大脳で急に多量の出血をしたり、はれたりすることがあります。
    そうなると、脳内の圧力が上がり大脳からの圧で脳幹を圧迫し意識がなくなり死に至ります。
    このような場合は、血のかたまりをとる手術や脳のはれをとる点滴をおこないます。

    頭部外傷でいちばん大切なことは、意識障害〔意識消失、朦朧(もうろう)としているか〕です。
     

     
    直後から意識消失が続く場合と、受傷直後に意識消失したあといったんよくなり、その数十分から数時間内にふたたび眠るように意識がなくなる場合があります。

     
    意識消失時間が短いとき、本人は覚えていないことが多く、他人が見たほうが正確です。
     

     
    「慢性硬膜外血腫(まんせいこうまくがいけっしゅ)」といって、徐々に出血していることがあります。
    この場合は開頭し血腫をとり除くと認知症がよくなることが多いです。
     
    頭部外傷後、意識障害があれば重症ですぐに入院します
     
     
     
    意識障害やけががなく、大丈夫と考えてもゆっくりした出血や脳のはれ〔脳浮腫(ふしゅ)〕が心配ですので、1日は安静にし、ようすをみることが大切です!

    その間、激しい頭痛吐き気・嘔吐(おうと)が起こったり、手足のしびれが出たり、意識障害が起きたときには一刻も早く脳外科医のいる病院を受診しましょう。

    Comment

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

    2 × 1 =

    脳血管障害】の最新記事
    • 中高年のための葉酸サプリで動脈硬化・認知症の予防を!
    • ゲンキの時間で紹介「健康カプセル」長寿ホルモンDSアディポでがん予防!
    • かくれ肥満も撃沈!糖尿病など生活習慣病の気になる方はアディポネクチン
    • 危ない!後遺症が怖いインフルエンザ脳症(症状や危険性、注意点)
    • 突然死の可能性がある「血糖値スパイク」痩せていてもなる可能性が
    • 【頭部外傷の基礎知識Ⅵ】頭を怪我すると精神症状が出ることが⁉

    Twitterでフォローしよう

    この記事を読んだ人はこちらの記事も読んでいます。